ブランディングにおけるカスタマージャーニーマップの活用法
最近さらに注目度が高まっている「カスタマージャーニーマップ」。直訳すると「顧客の旅」となり、その名の通り、ブランドを知り、他の商品との比較、問い合わせなど一連の顧客の購買行動を可視化したものがカスタマージャーニーマップです。
今回の第10回の記事ではそんなカスタマージャーニーマップについて、なぜ今必要とされているのか、有効に活用するにはどのようにすればいいのかをご説明します。
こんな人におすすめ
- カスタマージャーニーマップを作ってはみたが、一般的な内容となってしまった
- カスタマージャーニーマップをブランディングに有効に活用できていない
読んだ後に身につくこと
- 解像度の高いカスタマージャーニーマップの作り方
- カスタマージャーニーマップの活用法
カスタマージャーニーマップが注目されている背景
現代では、単に商品をリリースするだけではビジネスの成功には繋がりません。顧客のニーズを深く理解し、それを満たす製品をリリースすることを含め提供方法やアフターフォローまで注力することが求められています。これは、モノ中心型からサービス中心型の事業への転換が背景としてあります。
「価値は顧客と企業が共創する」と考える「サービス・ドミナント・ロジック」の思考や、製品の開発・改善から販売・マーケティング戦略の策定まで全プロセスを管理し、最終的な製品の成功に責任を持つ役割を担う「プロダクトマネージャー」という職務が注目されているのもそのような理由です。
ブランディングにおいて、より解像度の高いカスタマージャーニーマップを作るには
このカスタマージャーニーマップはブランディングを行う際にも欠かせません。ブランドはあらゆるタッチポイントで醸成されています。そのため、あらゆる取り組みにおいて一環としたメッセージや世界観で統一していく必要があります。しかし、企業にはさまざまな考えや視点を持つ社員がいます。そのため、顧客とのタッチポイントを点で考えて改善していくだけでは、どうしてもブランド体験として一貫性をとることは難しくなります。そのため、まずは一連の取り組みを顧客(カスタマー)の視点から見える化することをおすすめします。ここで必要になるのが、カスタマージャーニーマップです。
では実際にブランディングに活用できる解像度の高いカスタマージャーニーマップを作成するにはどうすればいいのでしょうか?カスタマージャーニーマップは実際にユーザーリサーチを行って制作するのが最も正確ですが、本記事では弊社内での作り方の一部を紹介します。
出典:『手にとるようにわかる ブランディング入門』(金子大貴著、 一色俊慶著)
- 対象となる顧客を設定し、ペルソナを作る
- 作ったペルソナになりきり、顧客が商品を購入する前から購入後までに経験する活動を洗い出す
- 洗い出した活動を、時間軸(経験のステージ)に沿って並べていく
- 各経験のステージでどんなタッチポイントがあるか、そこでどんな行動をするか、どんな感情を持っているかをマップに加える
この中で特に重要なのが、ステップ1のペルソナの設定です。名前、年齢、性別、居住地、職業、学歴、収入、家族構成といった属性をはじめ、趣味や習慣、休日の過ごし方、現在の課題、将来の目標など人柄やライフスタイルにまで踏み込んだリアルな人物像を設定することが大切です。そうすることによって、カスタマージャーニーマップを作成する側も感情移入がしやすくなり、ステップ2以降のフェーズでも顧客の視点でものが見られるようになるため、より深く顧客を理解することができるのです。
出典:『手にとるようにわかる ブランディング入門』(金子大貴著、 一色俊慶著)
また、これに加えてさらに詳しくペルソナを知るための手段として、インタビュー時にユーザーが感じていることを掘り下げるべく下記のような質問を投げかけることでユーザーの潜在的なニーズを探り、解像度を上げていくことができます。
- どんなことを課題として感じているか?
- なぜそれが解決できてないのか?
- なぜその課題を解決する必要があるのか?
- その課題を解決する目的は何か?
- 今はどのようにしてその課題を回避してるのか?(代替案の有無)
- 代替案での不満は何か?
今までカスタマージャーニーマップを作ってはいたが、表面的な内容になってしまい困っているという場合は、このようなユーザーの課題や潜在的なニーズを深ぼるリサーチを再度検討すると良いでしょう。新たにインタビューを行う以外にも、既存の顧客データや購買履歴を分析するといった方法も有効です。
以上4つのステップを丁寧に取り組むことで、上画像のようなカスタマージャーニーマップを作成することができます。
カスタマージャーニーマップの使用方法
作成したカスタマージャーニーマップは、どのように使うのがよいのでしょうか。一連の顧客体験をブランド体験として洗い出した後、要所要所で「キーとなるブランド体験」をどのように提供するかを考えるとより有用なマップとなります。顧客視点から見て顧客満足度が低くて改善が急がれるタッチポイントや、逆に満足度が高いのでさらに強化したい施策などが一目瞭然になります。ユーザー視点で施策の優先順位の見直しができるわけです。
個別のタッチポイントに関する施策の見直しだけでなく、顧客体験が時系列で俯瞰できるため、体験全体を通した改善案を検討することもできます。
カスタマージャーニーマップを使って新たな手法を生み出す
カスタマージャーニーマップを制作して明らかになった顧客の期待と現実の体験のギャップを埋め、ブランド体験の価値を高めるためには、これまで行ってこなかった新しい取り組みが必要になることもあります。アウター・ブランディングの初期には、どんな新しい取り組みが必要か自由にアイデアを出し合うワークショップなどを部門横断で行うことがおすすめです。
出典:『手にとるようにわかる ブランディング入門』(金子大貴著、 一色俊慶著)
まとめ
以上のように、カスタマージャーニーマップはブランディングの一連のブランド体験の見直しにおいて非常に重要な役割を果たします。カスタマージャーニーマップを使ってより深く顧客視点に立ち分析を行うことで、ブランディングにおける「ブランドの定義」をより説得力のあるものとできるのです。ブランディングに欠かせないカスタマージャーニーマップについて、もう一度見直してみてはいかがでしょうか。
【参考文献】
『手にとるようにわかる ブランディング入門』(金子大貴著、 一色俊慶著)
【Original Post】