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CX導入ガイド
CXマネジメントについて

CX Introduction Guide 02

CXマネジメントについて

CXマネジメントとは、顧客があらゆる接点で企業とどのように関わるかを全面的に理解し、管理・実践するプロセスです。
CXマネジメントを行うことにより、顧客体験のすべての段階にわたって一貫した高品質な体験を提供し、
企業は顧客の期待を超えるサービスを提供し、顧客満足度を高め、
最終的には顧客の忠誠心やブランドの推奨行動を促進することが可能になります。

ここでは、CXマネジメントの概念と構成分野を説明し、CXマネジメントを実践する方法について詳細に解説します。
CXマネジメントを深く理解することで、CXをより効果的に計画し、
実行するための戦略的洞察を得ることができるようになります。

CXとは
あなたの会社とのやりとりを顧客が
どのように受け止めたか

CXは企業側が一方的に提供できるものではありません。企業は、CXを向上させるために、製品の性能を高めたり、サービスの待ち時間を短縮することができます。しかし、製品の性能を2倍にしたり、サービスの待ち時間を50%短縮したこと自体が、CXが向上したことを示しているわけではありません。そのことを顧客が体験して、価値があると感じてはじめて、CXが向上したことになります。

CXは、顧客と企業とのやりとりの中で、顧客がどのような期待を抱き、実際にどんな体験をし、その体験をどのように感じたのか、という一連のプロセスを通じて、顧客自身の心の中で形成されていきます。優れたCXを提供できたかどうかは顧客にしか決められないということ、それが顧客一人ひとりの主観的な感じ方に委ねられているところに、取り組みの難しさが存在します。
顧客と企業の関係において、CXは、顧客への約束(期待・予想)とその約束を果たすこと(実際の体験)として理解できます。顧客は体験を通じて望む成果やゴールを追求しています。顧客が求める成果やゴールを達成する過程で、自分が抱いた期待が満たされると、顧客はその企業に対して信頼感を抱きます。逆に、期待が裏切られると不信感を抱きます。

企業のパーパスやブランドプロミスは、顧客への約束であり、それを具現化するのがCXです。CXの本質は、顧客が求めている成果やゴールを理解して、顧客の状況に合わせてその実現をサポートすることです。その取り組みは、自社のパーパスやブランド、ビジネス戦略と整合性のとれたものでなければなりません。経営層は、自社のパーパスやブランド、ビジネス戦略が、顧客が求めている成果やゴールに対してどのような意味を持つのかを明確にする必要があります。そこを曖昧にしたまま、CXに取り組むことはできません。

CXマネジメントとは
CXを改善し続けるための
組織としての一連の実践

「顧客が求めている成果やゴールを理解して、顧客の状況に合わせてその実現をサポートする」というCXの考え方自体はシンプルですが、企業が拡大し、従業員数が増えるにつれ、それは複雑で困難なものになります。どのように組織全体で目指すべきCXの方向性を一致させるか。どのように一人一人の顧客を深く理解し、適切なCXをデザインできるようにするか。どのようにCXの成果を測定し、ビジネス成果と結びつけるか。どのように縦割りの障壁を取り除き、部門間の協力・連携を可能にするか。どのようにすべての従業員が自律的にCXに取り組めるようにするか。CXに取り組もうとする時、多くの企業がこれらの難題に直面します。

こういった難題を克服するアプローチがCXマネジメントです。CXマネジメントは、それを採用するだけでCX変革を即座に実現する魔法の杖ではありません。CXマネジメントは、CX変革に魔法の杖は存在しないことを前提に、組織が直面する課題をひとつひとつ解決し、CXの組織能力を向上させ、持続的な改善を通じて自社のCX変革を実現するためのフレームワーク、手法、ツールを提供します。
組織がCXを実践するための能力向上がCXマネジメントの核心ですが、これは容易に達成できるものではありません。経営層は、まず自社の現在地(=CXマネジメントの成熟度)を把握する必要があります。その上で、CXマネジメントを通じたCX変革の道筋を示すことが、経営層の役割になります。

CXマネジメントを構成する
7つの力

「顧客が求めている成果やゴールを理解して、顧客の状況に合わせてその実現をサポートする」というCXの考え方自体はシンプルですが、企業が拡大し、従業員数が増えるにつれ、それは複雑で困難なものになります。どのように組織全体で目指すべきCXの方向性を一致させるか。
どのように一人一人の顧客を深く理解し、適切なCXをデザインできるようにするか。どのようにCXの成果を測定し、ビジネス成果と結びつけるか。どのように縦割りの障壁を取り除き、部門間の協力・連携を可能にするか。どのようにすべての従業員が自律的にCXに取り組めるようにするか。CXに取り組もうとする時、多くの企業がこれらの難題に直面します。


こういった難題を克服するアプローチがCXマネジメントです。CXマネジメントは、それを採用するだけでCX変革を即座に実現する魔法の杖ではありません。CXマネジメントは、CX変革に魔法の杖は存在しないことを前提に、組織が直面する課題をひとつひとつ解決し、CXの組織能力を向上させ、持続的な改善を通じて自社のCX変革を実現するためのフレームワーク、手法、ツールを提供します。
組織がCXを実践するための能力向上がCXマネジメントの核心ですが、これは容易に達成できるものではありません。経営層は、まず自社の現在地(=CXマネジメントの成熟度)を把握する必要があります。その上で、CXマネジメントを通じたCX変革の道筋を示すことが、経営層の役割になります。

CXビジョン
CXビジョンは、組織が目指しているCXの理想の状態を要約したものです。これは、組織内のすべての部門と機能を、共通の顧客中心の目標に向けて鼓舞し、動員し、連携させるための北極星の役割を果たします。
顧客インサイト
顧客インサイトは、意図的なCXを構築するための土台です。顧客の行動、好み、動機やゴール、ペインポイントについて、深いインサイトを獲得します。
CXデザイン
製品やサービスに限らず、すべての顧客接点でのやりとりと、そのやりとりを可能にするしくみや社内プロセスを、機能面だけではなく顧客の感情に焦点を当てて構想し、プロトタイプを作り、顧客へのテストをもとに軌道修正を行う反復的なプロセスです。
デジタル技術
デジタル技術は、レコメンデーション、チャネルをまたがるシームレスな体験、リアルタイムでの顧客データ分析・改善など、パーソナライズされた体験を大規模に提供するためのプラットフォームを提供します。
CX測定
CXによる顧客の考えや気持ちの変化を測定し、顧客ロイヤルティやビジネス成果との関係を分析することで、オペレーションの変更がCXにもたらす影響や、CXが自社の収益に与える影響を理解できるようにします。
管理体制
CXの継続的な改善を推進するためのルールやしくみを構築し、特定の施策に対する責任をリーダーに割り当て、変革に対する責任を持たせることで、サイロ化された部門が協調的な行動を妨げたり、従来のビジネスのやり方に逆戻りするリスクを回避します。
CXカルチャー
顧客中心のカルチャーを醸成し、従業員がリーダーシップを発揮してCXを向上させる方法を導入して、すべての従業員が自律的にCX施策を推進できるようにします。

CXビジョン

CXビジョンは、組織が目指しているCXの理想の状態を要約したものです。
これは、組織内のすべての部門と機能を、共通の顧客中心の目標に向けて鼓舞し、動員し、連携させるための北極星の役割を果たします。

CXビジョンは自社のパーパスやミッションに基づき、同時にブランドやビジネス戦略と整合性のとれたものになります。自社のCXビジョンを検証または新たに策定する際には、経営層は2つの重要なポイントに対する判断が必要です。

まず最初に考えるべきは、自社のパーパスが現在も新鮮で競争力を有しているかどうか。CXビジョンは、パーパスとの整合性が不可欠ですが、古くなったパーパスではCXビジョンも顧客にとって意味を持たなくなります。陳腐なCXビジョンでは、従業員を鼓舞することも難しくなります。
次に、CXビジョンが競合他社と差別化されているかどうか。CXで差別化するためには、CXビジョンがその方向性を明確に示さなければなりません。自社特有のCXビジョンを定義するには、深い顧客理解や競合他社の分析が不可欠です。このプロセスを経ずに、単に自社の願望や当たり障りのないCXビジョンを採用してしまっている企業は少なくありません。

顧客インサイト

顧客インサイトは、意図的なCXを構築するための基盤です。
顧客の行動、好み、動機やゴール、ペインポイントについて、深いインサイトを獲得します。

CXの実践でしばしば見受けられる誤りは、顧客を十分に理解しようとせず、企業側の一方的な思惑や、担当者の思い込みや決めつけに基づいて施策を計画し、実行することです。顧客インサイトは意図的なCXを実践するための土台になります。経営層から現場のスタッフまで、顧客インサイトが浸透し、意思決定に活用される必要があります。

まず、経営層の手元に顧客インサイトが届いているかどうかを考えてみましょう。経営の意思決定において、顧客インサイトが効果的に活用されているでしょうか。もし経営層の手元に顧客インサイトがないか、あるいはそれが意思決定に十分に組み込まれていない場合、現場でも、顧客インサイトを軽視し、売上や予算、時間といった企業側の都合だけでCXが推進されている可能性があります。これではもはやCXの実践とはいえません。

CXデザイン

製品やサービスに限らず、すべての顧客接点でのやりとりと、そのやりとりを可能にするしくみや社内プロセスを、機能面だけではなく顧客の感情に焦点を当てて構想し、プロトタイプを作り、顧客へのテストをもとに軌道修正を行う反復的なプロセスです。

CXデザインは、Webサイトの魅力やパーソナライズされたメール提供など、単一の顧客接点にとどまりません。
例えば、Webサイトで自社のサービスを魅力的に紹介し、顧客がそのサービスに期待した場合、顧客が期待した通りのサービスを提供しなければなりません。また、顧客に適切でタイムリーな製品レコメンデーションを行った場合、その製品を確実に在庫して提供できるようにしなければなりません。 顧客が複数のチャネルを介したやりとりを通じて自身の成果やゴールを達成しようとしていることに、企業が対応できるようにするためのフレームワークがカスタマージャーニーです。

CXデザインではカスタマージャーニーマップやサービスブループリントを使ってCXを視覚化します。これらのツールを利用して、顧客接点の間で顧客の期待と実際の体験を一致させるだけでなく、時には期待を上回るように、各顧客接点を結びつけていきます。そのためには、顧客との直接の接点だけではなく、顧客との一連のやりとりを可能にするしくみや社内プロセスをデザインする必要もあります。CXデザインでは部門横断的なデザインが不可欠ですが、縦割りの組織体制や各部門ごとの単独の目標が協力を難しくしています。
経営層は、既存の組織体制を考慮しつつ、部門横断的なデザインをどのように推進するか、適切な方針を示す必要があります。

デジタル技術

デジタル技術は、レコメンデーション、チャネルをまたがるシームレスな体験、リアルタイムでの顧客データ分析・改善など、パーソナライズされた体験を大規模に提供するためのプラットフォームを提供します。

デジタル技術を導入することで、企業は何千、何百万という顧客にリアルタイムで対応することができるようになるなど、CXマネジメントを大規模に実行することが可能になります。
しかし、デジタル技術の導入は、その過程で顧客の成果や期待に焦点を当てきれず、単に技術の導入そのものに重点を置くようになってしまう傾向があります。その結果、顧客が必要とするものとは異なる、顧客にとって意味のないソリューションが提供されてしまうことになります。また、機能面のみに注力し、ユーザー体験(UX)を十分に考慮せずに開発されるケースも少なくありません。その結果、顧客にとって使いにくいUIや複雑なプロセスが生まれ、悪いCXに直面した顧客は、不満を抱いたり、利用を中止したり、悪い口コミを広めることになります。

新しいデジタル技術の導入はCXに常に何らかの影響を与えます。経営陣は、それがCXに直接関わるものかどうかに関わらず、導入を検討するすべてのデジタル技術についてCXに与える影響を考慮する必要があります。また、デジタル技術の変化は速く、最新の技術でも数年で陳腐化してしまいます。導入の規模が大きくなればなるほど、必要な投資も増大します。経営陣は、自社が目指すCXに沿って顧客の成果やゴールに焦点を当て、中長期的な視点で、柔軟性と適応性を確保しながらデジタル技術の導入を計画する必要があります。

CX測定

CXによる顧客の考えや気持ちの変化を測定し、顧客ロイヤルティやビジネス成果との関係を分析することで、オペレーションの変更がCXにもたらす影響や、CXが自社の収益に与える影響を理解できるようにします。

CXの改善を場当たりなものではなく、継続的なものにしていくためには、CX施策の結果からインサイトを得て、さらなる改善活動に繋げていくサイクルが不可欠です。その要になるのがCX測定です。CX測定は、単なる定期的な報告やダッシュボードに終始するのではなく、デジタル技術を使ってリアルタイムな分析や即座の意思決定に活用されることでより大きな価値をもたらします。CX測定は、CXの実践をその場しのぎのアプローチ、経験や勘によるアプローチの段階から、データドリブンなアプローチへの進化を促進します。

ただし、企業によっては、従業員のデータに対する理解や活用意欲が低い、組織全体でデータが重視されていないといった、組織のデータ文化の未発達がこれを阻害している場合があります。データ文化の構築は、経営層にとって喫緊の課題となります。

管理体制

CXの継続的な改善を推進するためのルールやしくみを構築し、特定の施策に対する責任をリーダーに割り当て、変革に対する責任を持たせることで、サイロ化された部門が協調的な行動を妨げたり、従来のビジネスのやり方に逆戻りするリスクを回避します。

営業部門は売上の最大化、マーケティング部門はブランド認知度の向上、研究開発部門は新しい製品やサービスの開発に責任を負っています。一方、全ての部門はCXにおいて何らかの役割を担っていますが、それを遂行することが自部門の活動の効率を下げたり、足かせになったりすることがあります。部門の都合を超えてCXの遂行を確実なものにするためには、CXに対する各人の責任を明確にし、それを果たすためのルールやしくみが必要になります。CX委員会を導入するなど、CXを実践する上で各自がやるべきことを確実に実行するための体制を確立します。近年は、取締役会レベルの権限を持つチーフ・エクスペリエンス・オフィサー(CXO)を導入している企業も少なくありません。

経営層にとって、CXの管理体制は極めて重要な意味を持ちます。
“HIPPO”という言葉をご存知でしょうか。“HIPPO”とは、Highest Paid Person‘s Opinionの略で、経営層など組織内で最も高い給与を得ている人物の意見や判断が、意思決定において特に重要視される傾向を指します。CXの管理体制で最も重要なことは、企業の方針や戦略といった経営層による重要な意思決定において、CXや顧客ロイヤルティに与える影響が適切に考慮されているようにすることです。
“HIPPO”による偏見を回避し、より客観的で合理的な意思決定を可能にするのが、CX測定に基づくデータドリブンなアプローチであり、それを確実なものにするのが管理体制です。

CXカルチャー

CXによる顧客の考えや気持ちの変化を測定し、顧客ロイヤルティやビジネス成果との関係を分析することで、オペレーションの変更がCXにもたらす影響や、CXが自社の収益に与える影響を理解できるようにします。

CXの改善を場当たりなものではなく、継続的なものにしていくためには、CX施策の結果からインサイトを得て、さらなる改善活動に繋げていくサイクルが不可欠です。その要になるのがCX測定です。CX測定は、単なる定期的な報告やダッシュボードに終始するのではなく、デジタル技術を使ってリアルタイムな分析や即座の意思決定に活用されることでより大きな価値をもたらします。CX測定は、CXの実践をその場しのぎのアプローチ、経験や勘によるアプローチの段階から、データドリブンなアプローチへの進化を促進します。

ただし、企業によっては、従業員のデータに対する理解や活用意欲が低い、組織全体でデータが重視されていないといった、組織のデータ文化の未発達がこれを阻害している場合があります。データ文化の構築は、経営層にとって喫緊の課題となります。

なぜ、CXを改善し続ける必要があるのか

なぜ、これら7つの分野の能力を向上させ、CXを改善し続ける必要があるのでしょうか。

まず基本的な認識として、成熟市場では顧客は強い購入意欲を示さず、成長期の市場のような新規顧客の獲得は見込めません。需要は買替えか買増しが中心になり、企業は顧客のロイヤルティを維持し、市場シェアを守るためにCXに注力する必要があります。一方、成長途上の市場では、企業は効果的に新規顧客を獲得するために、CXに注力することでポジティブな口コミや顧客の支持を得ることが重要になります。公益事業などの競合他社が存在しない市場においても、不要なサービスコストを削減し、規制当局が関心を示すような苦情を回避するために、CXに注力する必要があります。
これらの基本的な理由に加えて、CXを改善し続けることが避けて通れない背景に、デジタル技術の急速な進化があります。異なる業界でデジタル技術が浸透することで、ある業界で優れた顧客体験をした顧客は、他の業界でも同様の体験を期待・予想するようになりました。デジタル技術の進化が、業界の垣根を超えて顧客の期待を絶えず引き上げているのです。顧客の期待水準が上がり続ける状況でCX改善の手を止めてしまうことは、顧客ロイヤルティの低下、悪い口コミの拡散、顧客の離脱に直接的な影響をもたらします。

デジタル技術によって企業がCXで提供できることがどんどん高度化し、その変化とともに、業界の垣根を超えて、顧客が「当たり前」と感じるCXのレベルが上がり続けています。経営層は、デジタル技術によるCXの進化と、それによる顧客の期待や予想の変化を常に把握する必要があります。そして、その変化のペースに乗り遅れることなく、柔軟性と適応性を確保しながらデジタル技術を適切に導入し、7つの分野の組織能力を向上させ続ける必要があります。この課題はCDOやCIOにとどまらず、全ての経営層に関わるものです。

CXマネジメントとは、顧客体験を改善し続けるための組織全体の実践であり、特定の活動を単に管理するのではなく、持続的な改善に焦点を当てるプロセスです。CXマネジメントを戦略的に行うためにはこれら7つの分野でそれぞれ企業内での実践と連携を強化し、顧客中心の文化を醸成することが重要です。

次章では、CXマネジメントを効果的に実践し継続的に改善するための具体的なフレームワークを紹介します。

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