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CX導入ガイド
CXへの取り組み方

CX Introduction Guide 01

CXに取り組む前に
経営層が考えるべきこと

多くの企業が顧客体験(CX)を非常に重要な差別化要因として認識しています。
しかし、CXで持続的な競争優位を築くために、何をどのようにすべきかを理解し、
それに取り組んでいる企業はほとんどありません。
単に経営層が「CXを強化する」と指示するだけでは、優れたCXを実現することはできません。

良いCXを提供し持続的な競争優位を構築するためには、企業はどのような取り組みをすればよいのでしょうか。
経営層はどのような役割を果たすべきでしょうか。

CXはセールスやマーケティングの手段ではない

セールスやマーケティングは、顧客の興味を引き、購買を促進し、自社の製品やサービスを販売することを目指しています。優れたCXは、顧客の購買プロセスがスムーズに進み、よりポジティブな購買体験を提供することで、セールスやマーケティングに貢献することができます。しかし、CXは、単なるセールスやマーケティングの手段ではありません。セールスやマーケティングは顧客の獲得に焦点を当てますが、CXは顧客との長期的な関係に焦点を当てます。CXでは、顧客が製品やサービスを購入し、利用する過程全体の満足度や感情が重視されます。その目的は、顧客ロイヤルティの向上です。

ビジネスの主導権が企業から顧客にシフトする中で、企業が持続的な成長を遂げるためには、顧客ロイヤルティを向上させることが極めて重要です。しかし、従来のセールスやマーケティング、ブランディングは、顧客ロイヤルティを向上させる役割を十分に果たすことができません。それを果たすことができる唯一のアプローチがCXです。CXは流行りのキーワードや気の利いたテクニックではありません。セールスやマーケティング、ブランディングと同様、CXにも専門知識やスキルが求められます。そして、それは継続的な改善や適切なマネジメントを通じて実践されなければなりません。

CXは洗練された顧客サービスを提供することではない

CXを語る際、しばしば「感動的な顧客サービス」や「使いやすいWebサイト」といった個別の顧客接点に焦点が当てられがちです。しかし、CXは顧客接点だけでは語れません。例えばレストランで、スタッフの接客がどれだけ素晴らしくても、料理が不味ければそのお店に再び足を運びたいと思う人は少ないでしょう。あるいは、webサイトでどれだけスムーズに製品を注文できたとしても、その製品が期日を過ぎても届かなかったなら「スムーズに注文できたからよかった」と考える人はいないでしょう。

CXは、顧客サービスが洗練されればされるほどよくなるものでもありません。例えば、百貨店と100円ショップでは、目指すCXが全く異なります。百貨店は高級感や品質を強調し、上質なサービスを提供することで顧客に非日常感や優越感を提供します。一方で、100円ショップは幅広い商品を手軽な一律価格で提供し、おおらかで気軽なショッピング体験を提供します。100円ショップが百貨店のような体験を提供すると、顧客は気楽な気分になれなくなります。逆に、百貨店が100円ショップのような体験を提供すると、顧客は非日常感や優越感を味わうことができなくなります。優れたCXは、自社がターゲットにする顧客が何を期待するかによって変わってくるのです。

期待通りの体験を提供することは簡単ではない

CXがまず目指さなければならないのは、顧客が期待したことを不快な思いをさせずに受け取ってもらうことですが、現実には顧客を不快にさせる体験が日常に溢れています。「注文時に見た写真と比べて実際の製品が安っぽかった」「製品を購入した企業から同じ製品の値引きメールが来た」「Webサイトに表記されていた問い合わせ窓口の電話が繋がらない」「セールスとカスタマーサポートの説明が食い違っている」。これらは、顧客が期待する通りのCXを提供できていない典型例です。

顧客が期待する通りのCXを提供することは、実際には容易ではありません。チャネルが多様化し、顧客接点が増えることで顧客とのやりとりの複雑さが増しています。同時に、それらのチャネルを横断するシームレスな体験に対する顧客の期待も高まっています。このような変化の中で、組織の縦割りが部門を超えた連携をますます難しくしています。組織のサイロ化は昔からある問題で、これまで企業側の都合で見過ごされてきました。「自社はCXをある程度は実践できている」と考える経営層は少なくないかもしれません。しかし、顧客は「この企業は縦割りの組織体制の中でよくやっているな」とは評価しません。顧客にとって関心があるのは、自分がよい体験ができたかどうかだけです。企業側の事情は関係なく、顧客が不快な体験をすれば、それは期待以下の体験だったと受け止められます。

多くの企業がCXの重要性を認識しているにもかかわらず、その実践方法については十分に理解していないのが現状です。 単に「CXを強化する」と指示するだけではなく、経営層は顧客の期待と感情に焦点を当てた包括的なアプローチを採用する必要があります。

CXは単に顧客満足度の向上することではありません。
CXの取り組みは接客のメソッドや製品デザインを改善するなどの、単一のサービスレベルを向上させることではありません。
顧客の体験全般に渡る感情を重視した、企業が目指すブランドイメージに沿った顧客体験の提供が必要です。これには、組織全体で共有される明確なCXビジョンの設定と、部門間の連携を強化することが求められます。

実際に顧客の期待に応える体験を提供することは多くの課題を伴います。組織の縦割り体制がこれを難しくしており、経営層はこれらの内部障壁を乗り越え、顧客からのネガティブな体験を最小限に抑えるための対策を講じる必要があります。
経営層が顧客の視点を深く理解し、それに基づいた戦略的なCXマネジメントを展開することが求められます。

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